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精度と性能の融合:面内分析用高効率PEEK試料ホルダー

1. はじめに

レーザーフラッシュ分析(LFA)は、円筒形試料の面内方向における熱拡散率を測定するために広く使用されています。専用の試料ホルダーを使用することで、面内方向の熱物性も評価できます。この構成では、試料ホルダーに2つのマスクを取り付け、試料の異なる領域にフラッシュ光を照射し、検出器で信号を取得することで、試料内部での半径方向の熱拡散を測定します。

従来、これらのマスクには、500°Cを超える温度での測定に対応するため、ステンレス鋼が使用されていました。この設計は熱拡散率の高い材料には適していますが、熱拡散率が約10 mm²/s以下の試料では、測定精度や再現性が低下し、場合によっては結果の信頼性にも影響します。これは、試料の熱拡散率がステンレス鋼と同等以下である場合、測定中に試料ホルダーが検出器信号に大きく影響するためです。

この制限を克服するため、面内測定用のPEEK製試料ホルダー(図1)が開発されました。PEEK自体の低い熱拡散率に加え、試料との接触を抑える設計と、最大3枚の下部マスクを使用できる構造により、ホルダーが測定に及ぼす影響を最小限に抑えています。

その結果、この試料ホルダーを使用することで、250°Cまでの温度において、熱拡散率の低い材料の面内熱拡散率を信頼性高く評価できるようになりました。

面内特性評価用PEEK試料ホルダーの設計
図1:面内特性評価用PEEK試料ホルダーの設計

2. 材料および方法

PEEK製試料ホルダーによる面内測定の精度を評価するため、熱拡散率の低い材料としてPyroceram® 9606およびPyrex® 7740を使用しました。また、熱拡散率の高い材料に対する性能を評価するため、純銅試料も測定しました。

すべての試料の直径は25.0~25.3 mm、厚さは240~530 μmでした。

測定前に、フラッシュ光および赤外線検出器にさらされる試料領域にグラファイトスプレーを塗布し、表面の吸収特性と放射特性を高めました。試料の上面と下面の残りの領域は未処理のままとしました。

すべての測定は、InSb検出器を搭載したLFA 717 HyperFlash® を使用し、窒素雰囲気下で実施しました。

試料と測定条件

  • 熱拡散率の高い材料:純銅
  • 熱拡散率の低い材料:Pyroceram® 9606、Pyrex® 7740
  • 試料直径:25.0~25.3 mm
  • 試料厚さ:240~530 μm
  • 測定装置:LFA 717 HyperFlash®(InSb検出器搭載)
  • 雰囲気:窒素

銅試料の測定では、下部マスクを1枚使用し、NETZSCHのProteus®ソフトウェアに実装された「In-Plane Model」でデータを解析しました。

熱拡散率の低い材料では、下部マスクを3枚使用し、「In-Plane low-λ Model」を用いてデータを解析しました。

3. 結果と考察

図2a、図3a、図4aは、それぞれ銅(Cu)、Pyroceram® 9606、Pyrex® 7740の熱拡散率の測定結果を示しています。

銅およびPyroceram® 9606の試料では、フラッシュ照射時刻を起点として、半減期t₁/₂の10倍までの検出器信号にIn-Plane Modelを適用しました(図2b、図3b)。検出器信号とモデルの良好な一致は、測定結果の信頼性を示しています。

3.1 銅(Cu)の測定結果

文献値と比較したところ、銅試料の熱拡散率の偏差は、調査したすべての温度範囲で±3%を大きく下回りました。これは、PEEK製試料ホルダーが熱拡散率の高い材料の測定にも適していることを示しています。

銅試料の面内熱拡散率の測定結果と検出器信号のフィッティング結果
図2:銅試料の面内測定結果(a)。50°Cで測定した検出器信号(青)とIn-Plane Modelによるフィッティング結果(赤)。フラッシュ光は黄色で表示。

3.2 Pyroceram® 9606の測定結果

Pyroceram® 9606では、100°C以下の温度域において、銅と同程度の測定精度が確認されました。一方、面内熱拡散率が低下するにつれて、測定精度はわずかに低下しました。熱拡散率が1.5 mm²/s未満の場合、文献値に対する偏差は約6%でした。

Pyroceram 9606試料の面内熱拡散率の測定結果と検出器信号のフィッティング結果
図3:Pyroceram® 9606の面内測定結果(a)。50°Cで測定した検出器信号(青)とIn-Plane Modelによるフィッティング結果(赤)。フラッシュ光は黄色で表示。

3.3 Pyrex® 7740の測定結果

Pyrex® 7740では、検出器信号に対するIn-Plane Modelのフィッティング時間を18,000 msに制限しました(図4b)。

測定時間が長くなると、試料ホルダーの影響が顕著になります。その結果、モデルと検出器信号の一致度が低下し、測定の不確かさが増大します。この試料で観測された偏差は、対応する文献値に対して約10%でした。

Pyrex 7740試料の基準熱拡散率と面内測定結果、検出器信号のフィッティング結果
図4:Pyrex® 7740の基準熱拡散率と面内測定結果(a)。50°Cで測定した検出器信号(青)とIn-Plane Modelによるフィッティング結果(赤)。フラッシュ光は黄色で表示。基準値は、各温度における文献の熱拡散率・比熱容量データ[3,4]と室温密度から算出。

4. まとめ

PEEK製試料ホルダーは、最高250°Cまでの面内測定に適していることが確認されました。最適化された設計とPEEKの低い熱拡散率により、熱拡散率が1 mm²/sをわずかに下回る材料でも、LFAによる面内測定が可能になります。

これにより、従来は測定が難しかった熱拡散率の低い材料にも、面内LFAの適用範囲が広がります。

参考文献

  1. Touloukian, Y. S. et al. Thermophysical Properties of Matter – TPRC Data Series, Vol. 10, Thermal Diffusivity (1974).
  2. Salmon, D., Roebben, G., Lamberty, A. and Brandt, R. “Certification of thermal conductivity and thermal diffusivity of glass ceramic reference material BCR-724 up to 1025 K.” European Commission (2007).
  3. Touloukian, Y. S. et al. Thermophysical Properties of Matter – TPRC Data Series, Vol. 2, Thermal Diffusivity (1970).
  4. Touloukian, Y. S. et al. Thermophysical Properties of Matter – TPRC Data Series, Vol. 5, Thermal Diffusivity (1970).

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