グッチからネッチへ
いつもお世話になっております。ネッチ・ジャパンの篠田です。
今月、日本分析機器工業会の定時総会に珍しく参加させて頂きました。国立研究開発法人 産業技術総合研究所理事長の石村和彦様のご講演会があるということで、その拝聴が一番の動機でした。
大変パワフルなご講演でしたが、その中で特に首肯いたしましたのは、プリゼン中の“「どうすれば他社を引き離すような差別化が実践できるか」→「イノベーションの創出」→「D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)が必要」→「オープンイノベーションが有効」”というところです。
これはまさしくネッチ・ジャパンの戦略と合致するところがございまして、それもそのはず、石村和彦理事長のプリゼンの最後に、産総研技術移転ベンチャーのPicoTherm社とネッチ・ジャパン社による合併が成功事例のひとつとして挙げられておりました。これは大変光栄なことです。(厳密に申しますと、弊社はドイツの100%子会社でして、結局はこの優れた技術にそれだけの価値を見出したのは、日本の分析機器メーカーではなくて海外資本ということになってしまいますが、それをここで書いてはちょっとマズイ)
とにかく、産総研様の薄膜熱物性測定装置の技術を弊社に導入させて頂いたことは成功だと思っておりますし、僥倖だったのは、同技術が超高速レーザーフラッシュとも呼ばれているように、ネッチ社の得意とするレーザーフラッシュの薄膜への延長とも呼べることと、熱物性学会を通じて人とのつながりや信頼関係が先に出来上がっていたことだと思います。
JAIMAがJASISだった時代に、必ず何件かは薄膜測定の引き合いはあったのですが、ハーフタイムを推定して無理なそうなものは、都度PicoTherm社にお伝えしておりました。
また、LFAでの測定限界ぎりぎりのもので、なかなか結果が出せず、お客様にご迷惑をかけてしまったこともあり、「何とかせねば…」と思っておりました。結局は、企業の人間が探し求めていた技術が、“丁度産総研様で開発されていたこと”につきると思います。
話が少しそれますが、20年以上前は、本当にネッチ社は日本の分析機器業界で無名でして、代理店の重役に偉そうに「ネッチだかグッチだか知らんが。」なんて言い方がされたのを今でも根に持っております。(その人も結局はネッチ製品をビジネスチャンスと思ったのに最近気が付きましたが)
それが、産総研の理事長に成功事例としてご紹介頂けるというようになりましたことは、ここまで支えて頂きましたネッチファンの皆様のおかげでございまして、まことにあり難いことです。理事長様には懇親会でご挨拶申し上げようと思ったのですが、普段食べつけない高級ホテルの料理に心を奪われている間にその機会を失してしまったことは、名刺管理アプリ“sansan”のコマーシャルにでてくるダメ社長そのものだと思いました。なお、その代理店様とはネッチ・ジャパンになりましてから、あまりお付き合いは無いようです。
ものには絶対価値と相対価値というものがあるということですが、産総研様で生み出された技術は絶対価値、それが広く社会に貢献するかどうかは相対価値であります。分析機器メーカーが玉石混交の技術の中から、絶対価値の高いものを見出して投資するか否かは、定時総会に集まられたような経営者の皆様の知能と勘にかかっているわけです。
産総研によるオープンイノベーションの成功例当事者の(小さくても一応)社長が、懇親会で無駄にえび天をパクついている好機に、ご歴々との名刺交換に気を取られて、誰も情報を聞き出そうとしないというのは、少し残念なことではありました…。
次回は、産総研様に超高温シリーズのラインアップ(世界を見渡してもこれだけ充実したラインアップはそうはございません)を御導入頂きましたので、その記事をご紹介させて頂こうと存じます。
今後ともネッチ・ジャパンを宜しくお願い申し上げます。