レアアースの熱分析

2026.02.24

こんにちは、ネッチ・ジャパンの篠田です。
寒かったり暖かかったり寒暖差の大きな日々が続きますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?

 

最近は、本当にドイツ本社からの来客が多く、毎月のようにいらっしゃいます。日本に詳しい方もいて、先日YouTubeで見たという西南戦争について聞かれたのには驚きました。来年は西南戦争百五十周年、取り上げられることも多いのかも知れません。家内の高祖父が西郷軍のロジスティックスで参加しております。記録によると、当初明治天皇奪取計画を持ち掛けたのですが、篠原国幹に却下されたとか。西郷さんとも普通に直接言葉を交わしているので驚きです。丁度そんなディープな話をドイツ人の方と話しておりました。

 

先月は、ドイツのバイエルン地方のど田舎町、Selbにあるドイツ本社で、マネージャー会議がございまして、雪の中を訪れて参りました。
今回は、日本の市場でのホットなトピックをプリゼンせよとのお達しでしたので、言いたいことを言って参りました。

 

その中のひとつに、レアアース・レアメタルを選びました。佐川先生の発明されたネオジム磁石と、熱安定性付与の為、付加されるDy, Tbなどの重希土類金属の話題です。例によって中国が輸出規制をかけておりますので世界的に問題になっておりますが、ドイツなどようやく最近になって、日本に学ぼう、なんという意見も聞かれるようになりました。日本は2010年から着々と研究を重ねて、中国依存率を90%から60%台にまで減らしてきましたが、EUは依存率98%ですので首根っこを押さえられているようなものです。レアアース泥を採取に出発する「ちきゅう」をテレビで観て、「宇宙戦艦ヤマト」の音楽が頭の中で鳴っておりました。♪「さらば~ちきゅうよ、旅立つ船は~」が、まさにぴったりです。 これを書いている今、すでに無事に帰還していますが、これからはコスト削減です。泥を汲みだすのに、 NEMO Pump が使えるのではないかと、三年も前に協力会社の方に申し上げたことがあるのですが…。

 

 そのジスプロシウム(Dy) ですが、学生のころ、単結晶を作成したことがあります。作成方法をこっそりお伝え致します。ジスプロシウム(Dy)はとにかく酸化しやすいので、油に浸かった状態で購入するのですが、超音波洗浄して、アーク炉でボタン状に融解してから、アルゴン雰囲気中タンタル封入します。封入するときは接触面をへらすよう、凸凹にしたタンタル板にのせます。これをシリコニット焼鈍炉で融点よりある程度低いところで3日間アニールすると、エッチングすると再結晶してグレインが成長しているのが解ります。ここからが大変です。大きなグレインを切り出して、ラウエ写真で方向を決め、半導体カッターで切り出すのですが、あらかじめ方向があっていないと、どつぼにはまります。その方向は、なんと目で決めるのです。

 

硝酸溶液でエッチングして、室内灯にあてると、c軸の方向で、一様に白く光るのです。これを習得するのに1年かかりました。Dyは、結晶格子と磁気モーメントの結合が強いので、磁場をかけるとX線回折で相転移の挙動が見られるのです。ヘリカル構造だったり、ファン構造だったり、中間のヘリファン構造だったりとるのですが、「絶対世の中の役には立たないな~。」と思っておりました。そんなDyでもネオジムマグネットに添加すると格段に熱的安定性が増すのです。

 

 話が長くなりましたが、結局ネオジムマグネットの熱分析は、酸化防止が肝です。そのためには真空密閉構造はもちろんのこと、それでも取り切れない残留酸素を吸収する技が必要です。注意して頂きたいのは、“酸化防止のため若干の水素を入れる。”…これだめです。
以前弊社のSさんとJEOLさんとの共同研究で発表したことがありますが、鉄って結晶構造転移にともなって水素を吐いたり吸ったりするんです。これはTG-MSの結果で示されていまして、良く知られておりませんが、非常に大切な発見だと思っています。ですので、弊社のOTSオプションは必須なのです。

 

 そうすると、キュリー点で鋭い比熱のピークが観測できますし、積分することにより磁気エネルギーが求められます。古典的なワイス近似では、この磁気エネルギーは磁化の2乗に比例しますので、磁気比熱はそれの温度微分、つまり磁化と磁化の温度微分の積に比例します。磁化はキュリー点で急激に零になりますので、したがって磁気比熱もキュリー点付近で鋭いピークを生じます。一方、磁化は温度と磁場の関数として、ブリュアン関数と線形の関数の交点から求められるので、磁気比熱もシミュレーションすることができます。

 

 キュリー点は熱分析装置の温度校正にも使用できるのをご存じでしょうか?
LFAで熱拡散率を測定するとキュリー点付近で極小値を示しますので、何個か異なる磁性体を測定することにより、試料に熱電対をつけなくても校正できますし、融解ピークの見えない、真空TGの校正にも使用できます。この場合にはヘッドホンのような形の磁石を加熱炉の外側にとりつけて、試料部に磁場勾配をつけます。いってみればファラデー天秤のようなものです。ここはひとつ疑問に思っていることがありまして、上述のブリュアン関数を用いた磁気比熱は、磁場中ではピークがなまります。つまり、磁場勾配だけでなく磁場が存在するとピークの位置が少しずれてしまう。キュリー点以上でも、実際にはスピンの“群れ”は残りますので、比熱の温度依存性は計算通りにはいかないのですが、悩ましいところです。

 

そんなこんなで、レアアース・レアメタルのトピックはドイツ本社の皆さんも大いに興味を持って頂けました。ドイツも頑張れ!
今回は、少しディープなレアアースの話題でした。

 

今後ともネッチ・ジャパンを宜しくお願い申し上げます。

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